冬の星座






１


　

「殺したの？」
　冷静な声だった。
「…死んではいない」
「生きてもいないんでしょう？」
「眠っているだけだ。深くな」
「自分で起きられないなら、死んでいるのと同じよ。ねぇ、ヘルガ」
　揶揄する女の声を背に、ゴドリック・グリフィンドールはベッドに横たわる同僚を見下ろした。昨夜の情事の跡が残る肌に、もはや生気の欠片は残っていなかった。
「それでどうするの？学校止めちゃうの？」
　もうひとりの女が問うた。
「続ける」
「三人で？」
「四人だ」
「ゴドリック、頭大丈夫？４−１は３だよ？」
　ヘルガ・ハッフルパフが、気の毒そうな目を向けた。レイブンクローも頷いて問うた。
「スリザリンをそんなにしておいて。あなた正気なの？」
「正気だ。サラザールの思想は彼の弟子に継がせる」
「それじゃぁ、サラザールを殺した意味がないよ？ゴドリック」
「殺してはいない」
「水掛け論はしたくないわ。まあ、いいでしょう。その方が安全だし」
「どういうこと？」
「スリザリンの様に純粋すぎる思想の持ち主は、思い詰めるとなにをしでかすか判らないでしょう？そういうのは野放しにしないで、手持てにおいて管理した方がいいのよ」
　問うたハッフルパフに、レイブンクローは恐ろしいことをさらりと言ってのけた。　
「それで？彼をどうするの？」
　返答次第では抜けるわよ。含みのある言葉だった。
「学校の礎にする」
「…なるほど。私たちの教育が間違っていたら、彼が目を覚ますのね？」
「じゃあ、校章に刻もう。忘れちゃうといけないからね。なんて書こうか？」
「彼は蛇語が堪能だったもの。竜よ」
「『眠れる竜を起こすな』だね。起こしたら学校はお終いになるんでしょ？」
「そうよ、ヘルガ。私たちの試みに、彼が審判を下すのよ」
　切れ長の目を細め、レイブンクローが微笑した。



＜続く＞
2002/08/03　脱稿
かなり前から振るだけ振っていたゴドリック・グリフィンドール×サラザール・スリザリンです。