WILD　CHILD　〜極光〜



１３


「お高く留まるな。ポッターッ」
　今にも泣きそうな怒り顔で捨て台詞を吐いて、マルフォイは教室を出ていった。
「…そういうつもりはないんだけどな…」
　ハリーは困って頬を掻いた。隣の二人も、ばつが悪そうに頸を竦めた。

　秘密を知ってしまった三人は、マルフォイにどう接していいのか迷ってしまった。嫌みを云われても、突っかかられても、腹が立たない。虚勢の後ろの素顔がちらついて、胸が痛くなるのだ。いまも、マルフォイの挑撥をはぐらかした。
　これにはマルフォイの方が困惑した。
　ハリーをからかっても、ウィーズリー家の家計をけなしても、グレンジャーを「穢れた血」と罵っても、彼らは怒らない。それどころか、悲しげな瞳でじっとマルフォイを見る。同情でもしているようなそんな目だ。
　居たたまれない。やり場のない怒りが突き上げる。掴みかかって殴ってやりたい。力ずくでも、自分に向き合わせてやりたい。
　体が戦慄いた。
　だが、できなかった。あがけばあがくほど、惨めになるだけだと、自尊心が告げていた。
2002/1/1　UP
　

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