WILD　CHILD　〜極光〜



４１



　奇妙な逢瀬が続いていた。
　彼に遭いたくなったときには、消灯時間を過ぎた頃、こっそりと寮を抜け出す。あてなく彷徨っていても、フィルチやゴースト等に見つかる前に、彼が現れた。
　導かれる先は、誰も知らない小部屋であったり、秘密の通路であったり、角櫓であったりした。求まられるままセックスをすることもある。話をするだけのときもある。なにも話さず、只より添っているだけのこともあった。
　それだけで、マルフォイは安らいだ気分を手に入れることができた。
　自分しか存在を知らない彼。全てをさらけ出すことができた。
　彼はノーバディに溺れていった。
　
　安息地を手に入れたマルフォイは、ハリーに背を向けた。極力、関わらないよう息を潜めた。
　ハーマイオニーやロンと机を並べながら、ときおり遠巻きにハリーを眺めた。胸がちくりと痛んだ。意味のない感傷だと思った。将来あの方を倒す偉業を達成すべく期待され、光の中を歩く彼と自分とは、そもそも歩く道から違ったのだ。
（これからも彼は祝福された人生を行く。僕は…）
　不意にハリーが振り返った。マルフォイは慌てて俯いた。
　先の実験以来、ゴイルとクラッブも周囲に馴染みつつあった。ハリーと対抗することが自分達らしさだった。その色が薄れ、彼らの灰汁も薄れた。
　影が薄くなる。僕から僕らしさがなくなる。
　いつか透けて消えていくのではないだろうか。自分だけに触れる彼のように、誰からも忘れ去られて。
（ああそうだね、ノーバディ。僕は君と同類だ）　
　
　その晩も寮を抜け出した。
2002/1/25　UP

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