WILD CHILD 〜極光〜４３「…望みはないの？」 胸元の前を通って肩に回された腕に手を置いて、マルフォイは頭を上げた。 「…キス以外で？」 「うん。ない？」 見透かされた問いに、頷いた。 「…考えたことないなぁ。君がこうして会ってくれてるし」 「欲がないね」 「充分欲張りだと思うけど？僕は」 マルフォイの胸元に頭を預け、ノーバディは甘えるように彼の腰を両手で抱いた。 「馬鹿」 マルフォイはノーバディの頭に手を伸ばした。フードの上から両側に手を添え、上向かせた。引き寄せ、自分も上体を屈めて、額とおぼしき場所にそっとキスした。前髪と人肌の感触がした。 「くすぐったい」 「そう？」 ノーバディが笑うから、マルフォイも笑えた。 「いい？」 ねだるような声音でお伺いを立てるノーバディに、マルフォイは頷いた。 ベッドに押し倒された。室内を照らしていたカンテラの明かりが小さくなった。ノーバディはマルフォイを抱くとき、照明を極限まで落とすのを常としていた。姿の見えない彼には必要のない配慮だった。 「ここのところ頻繁だけど、体は大丈夫？」 「平気…気にすることない」 嘘だった。 逢瀬を重ねることは、マルフォイの体に少なからぬ負荷を残していた。それでもマルフォイは極力肌を重ねるようにしていた。もともとノーバディはそれが目的でマルフォイに近づいたのだ。彼にとって自分の肉体がないがしかの価値を持っている。彼に与えられるもの、マルフォイが自分の持っているものでノーバディに酬いることができるのは、この行為だけだった。 「…っぁ…ん…」 仰け反った喉から声が溢れた。衣服をはぎおとされ、顕わになった肌に彼がむしゃぶりついてくる。いまや持ち主以上にその肉体に精通したのだろうノーバディが、楽器を楽しむように四肢を貪る。ぴちゃりと音を立てる舌の動きに翻弄された。 行為が好きなわけではない。体を裂く痛みは辛い。だが、それに耐えることで、マルフォイはノーバディに酬いることができているような気になれた。 「っっああぁ」 突き上げられて声が上がった。 涙が溢れて、頬を伝う。 それが感傷から来るものなのか、快感からもたらされたものなのか、判断できるだけの理性は残っていなかった。 2002/1/27 UP← → |