WILD　CHILD　〜極光〜



６


「これを飲んで。今日もこちらに泊まりなさい」
　薬湯を手渡され、マルフォイは失望に肩を落とした。
「マダム・ポンフリー。寮に戻らせてください」
「駄目です」
「ただ眠るだけなら、寮でもできます」
「いいえ。駄目」
「でもっ」
「駄目です。スリザリン寮は地下なのよ？あそこでは、治るものも治らないわ。貴方はもっと自分の体を労ることを覚えなさい。地上の寮に移るべきよ」
「嫌ですっ。僕はスリザリンでないと…」
「だったら、もうしばらく我慢なさい」
取り付く島もない。マルフォイは諦めて、薬湯を口に運んだ。
　化膿止めと鎮静剤。熱冷まし。
（こんなの、僕の部屋にいくらでもあるのに…）
　マルフォイの衣装だなの引き出しは薬瓶でいっぱいだった。スネイプに頼んで調合して貰ったもの。自分でも作ったもの。
　ハーマイオニーを凌ぐ教科は魔法薬だけだ。誰もがスネイプの身びいきだと嗤った。
　真実は彼も知らない。スネイプは「評価に私情は挟まん」とすげなく云うだけ。そうあって欲しいと願う心と、自分と父との軋轢を憐れんでの嘘ではないかと疑う心。真実を見定められない幼さが不安を煽った。
　同級生の誰よりも上手く調合できるという自負はある。この教科は、なにより大事。彼は自分自身のために、その知識が、技能が、必要だった。
　出来損ないの体を補うために。
「さあ、飲んだらお休みなさい。休養が一番の薬だわ」
　薬が効いたのだろう。寝かしつけられると程なく睡魔に絡め取られた。
2001/12/25　UP
　

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